【感想】「配達あかずきん」大崎梢著|日常ジャンルの「本格派」書店ミステリー小説!

Pocket

こんにちは、ミャザです!

 

今回は、

大崎梢 著

「配達のあかずきん」

~成風堂書店事件メモ~

を紹介します!

 

主な登場人物

主人公の杏子(きょうこ)

しっかり者で書店の知識が豊富な女性。この小説の助手役というイメージ。

アルバイトの多絵(たえ)

不器用だが頭が良く、勘も鋭いこの小説の探偵役

この二人の書店員が、お客さんが持ってくる謎を解き明かしていく物語です。

 

ゆったりとした書店の日常を追うミステリーと思えますが、全くそうではなく、

「書店に関連ある謎」はかなり迫力あるミステリーです!

「大崎ワールド」に引き込まれること間違いなし!!

「配達のあかずきん」は、シリーズものの第一弾です。

 

1.「配達あかずきん」の作品情報とあらすじ

1.1:「配達あかずきん」の作品情報

著者  :大崎梢(おおさきこずえ)

タイトル:配達あかずきん

~成風堂書店事件メモ~

出版社 :創元推理文庫

発行年月:2009年8月31日

ページ数:234ページ

 

1.2:あらすじ

しっかり者の杏子と、勘の鋭いアルバイト・多絵が働くのは、駅ビルの六階にあるごくごく普通の書店・成風堂。近所に住む老人から渡された「いいよさんわん」という謎の探求書リストや、コミック『あさきゆめみし』を購入後失踪した母を捜しに来た女性に、配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真・・・。杏子と多絵のコンビが、成風堂を舞台にさまざまな謎に取り組んでいく。元書店員ならではの鋭くもあたたかい目線で描かれた、初の本格書店ミステリ。シリーズ第1弾。

「配達あかずきん」では、

五つの短編からできており、順番に

・「パンダは囁く」

・「標野にて、君が袖振る」

・「配達あかずきん」

・「六冊目のメッセージ」

・「ディスプレイ・リプレイ」

となっています。

タイトルの「配達あかずきん」は短編の一つから取ったものです。

2.ゆったりした書店の日常。ではなく迫力ある「本格ミステリー」

2.1:迫力ある本格ミステリー

この本を読む前は、

ゆったりとした書店で、「ちょっとした謎を解き明かすミステリー」だと思っていました。

実際は全くそんなゆるい話ではなく、人は死なないが、結末になるにつれて迫力ある「事件」が起きる内容です。

 

特に最初の「パンダは囁く」では、

ボケたおじいさんが、欲しい本のリクエスト

「あのじゅうさにーち いいよんさんわん ああさぶろうに」

と暗号めいた言葉で、まったく意味が分かりません。

 

「この意味って何だろう?」と軽い気持ちで読んでいて、

「結末で、ちょっぴり悲しくなるような話だろうな」と予想していました。

しかし結末で、「うわっ!そういうことなの!?」とかなりビックリする急展開になります。

日常のゆるいミステリーではありません。

「あのじゅうさにーち いいよんさんわん ああさぶろうに」

この言葉にもしっかり意味があり、どんどん謎が明らかになっていきます。

この物語の結末は、読んでみて確かめてください!

 

「パンダは囁く」で完全に心を掴まれた後、

次の短編、「標野にて、君が袖振る」で、

角度が180度変わった、甘い大恋愛の話になります。

さっきの話では大事件の急展開だったのに、、、と

感情が上下に揺れるような、強烈な印象が残りました。

一つの話だけでなく、

短編の構成でも、心をかなり揺さぶるように作られており、

完全に心を掴まされました!!

 

2.2:最後の戸川安宣さんの「解説」も確実に読むべき!

この本を読めば、本格的なミステリーだとすぐ分かりますが、

「なぜこんなに惹きつけられるのか?」

その疑問は「解説」まで読むと分かります。

「解説」でこのミステリーの理屈をしっかりと説明しており、よりこの小説の面白さを認識することができます。

 

この小説の手法として、「コナン・ドイル」のシャーロックホームズシリーズと同じ手法を使っていることが分かります。

最初の「パンダは囁く」で、本を探しに来たお客さんは、断片的なうろ覚えで来ることも少なくありません。杏子はその断片的な手掛かりをもとに推理する。という冒頭のシーン。

最初の時点でまんまと「名探偵じゃん」、「すげー!」と思って読んでいましたが、

それは「つかみの部分」であり、ここで心を掴み読者を虜にします。

「ホームズが初見で、ワトソンを軍医と見抜いた場面」の「つかみ部分」と同じです。

 

「解説」を読むと心を掴まれている理由を説明してくれますよ。

3.元書店員ならではの視点と、業務内容が関連する「謎」

3.1:元書店員ならではの視点でミステリーを描いている

著者は元書店員を経験しており、その経験をもとに執筆したそうです。

なので書店員の日常業務内容が具体的に描かれています。

その業務が犯人のトリックに使われたり、事件のヒントが隠されていたりすることがあります。

そこがこの小説の面白い部分の一つです!

業務内容を説明したあと、きちんと回収してくれるのでスラスラと読むことができます。

 

書店での失礼な客の具体的なあるあるや

本がたくさんある書店ならではの大変な作業・業務も描かれています。

普段は見ることができない、書店員の裏側業務を具体的に描いています。

 

成風堂の、配達先に本を届ける業務

毎朝毎朝、その日の入荷リストと配達分をつき合わせ、一軒ごとに調えていくのも気を遣う作業だが、それらを受け取り、駅周辺の各店舗に届けているのはバイトやパートの役目であり、これはこれで大変なのだ。

第3話の「配達あかずきん」では、この業務が引き金となって事件が起きます。

日常業務を振り返り、誰が何をしたのかを推理する。

このミステリーの主な推理法です。

「本を配達する」という書店ならではから事件が起きるのが、面白いですよね!

4.「本」に関する、共感するシーンがいくつもある!

4.1:共感できるシーン3選

「でも、人から借りてもう読み終わった本でも、後からわざわざ買うことがあるじゃないですか。それもすっごく嬉しそうに。ふつうは読んじゃった本って、買いませんよ。

「良かったものは何度でも読み返したいのよ。自分の家の棚に置いておけば、好きなときに手に取れるでしょ。そう思うだけで気持ちが落ち着くの」

これは本好きにはあるあるです。

本当に面白い本だったら自分でも買って読んで、コレクションにもする。面白い本を持っているだけで嬉しくなるんですよね!

紙の本で一冊買い、電子書籍でも一冊買うというのもありませんか?

紙の本だと持ってる感が出るのがいいし、電子書籍はスクショして残すことができるのがいいですよね。特に電子書籍で漫画の名シーンをスクショしています。

 

自分に悩みがある時あるある

「困っている自分に合う本」を探そうとしたときに、

「でもいざ探してみると、どうもピンとこないんですよね。それっぽいタイトルの本をみつけても、なんだか微妙にちがう。かといって、どういう本を期待しているかとなるとこれまたあやふやで」

これ超あるあるじゃないですか?

「なんか違う」もしくは、色々探してみると「全部自分に当てはまる」みたいな本ばかりですよね!

きちんと探すには、探す前にまず自分のことについて知っていないといけないし、次にその本屋に自分にぴったりと合うものを探さないといけない。だからその書店にあるかもわからない。

・一生、自分に合う本なんてないと思って、どの本も手に取れない

・逆にたくさん買いすぎて、何冊も同じような本を買っちゃう

悩んでいるときに、本を選ぶのは大変ですね。

 

第四話の「六冊目のメッセージ」で、

書店に来たお客さんが、病院で入院している間、本屋にいけないから書店員に選んでもらっている。

そのときの気持ち。

気の利いた一冊が選び取られ、きちんきちんと病室に届けられる。

病室で何もすることが無いときに、自分に合った本が届けられ、読み終わったらまた違う本が届けられる。自分の好みを分かっているような気の利いた本を選んでくれる。

こんな幸せなことはない!

受ける側は幸せだし、自分も相手に合った気の利いた本を届けられるような人になりたい!

・あまり本を読まない頭の固い人でも、その人に合いそうな本を紹介できる人

・自分のおススメを紹介し、期待を裏切らない気の利いた一冊を紹介できる人

・選書で相手を幸せな気持ちにできる人

めちゃくちゃかっこいい!!

「ブックソムリエ」的な人、憧れです!!

5.「配達あかずきん」は本好きにおススメなミステリー!

「配達のあかずきん」は、シリーズものとなっており

この後も続いていきます。

 

ジャンルが「日常の謎」でありながら、本格派のミステリー小説となっています。

書店員の業務内容について知れたり、失礼な客についても書かれています。

また本好きには共感できるような言葉やシーンも出てくるので、

本が好きでミステリーも好きな人にはおすすめの作品です!

 

大崎梢 著

「配達のあかずきん」

是非読んでみて下さい!

最後まで読んでいただき
ありがとうございました!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA