【感想】『探偵は教室にいない』川澄浩平著|登場人物たちの心の中を紐解いていく、青春ミステリー小説!

Pocket

こんにちは、ミャザです!

 

今回は、

川澄浩平 著

『探偵は教室にいない』

 

本作は、日常の謎を扱ったミステリーです。

しかし、注目してほしいのは推理をする場面ではなく、

推理したことによって見えてくる、登場人物たちの心の中の思い。

真実を知ることは、必ずしも問題の解決策には繋がらない、

だからこそ

相手を思いやる考え方をするべき。

ということを教えてくれる内容になっています。

 

ミステリーであり、

心温まる青春ストーリーです!!

 

01:『探偵は教室にいない』作品情報とあらすじ

『探偵は教室にいない』作品情報

著者  :川澄浩平(かわすみこうへい)

出版社 :創元推理文庫

発行年月:2021年9月24日

ページ数:234ページ(あとがきアリ)

 

あらすじ

わたし、海砂真史には、ちょっと変わった幼馴染がいる。幼稚園の頃から妙に大人びていた頭の切れる彼とは、長いこと会っていなかった。しかし、ある日わたしの許に届いた差出人不明のラブレターをめぐって、わたしと彼―学校に通わない名探偵・鳥飼歩は、九年ぶりに再会を果たす。札幌を舞台に、少年少女たちが謎を通して大切なことに気付いていく、第28回鮎川哲也賞受賞作。

この物語は、複数の短編構成となっています。

第一話の前に

第一話 Love letter from…

第二話 ピアニストは蚊帳の外

第三話 バースデイ

第四話 家出少女

あとがき

02:『探偵は教室にいない』謎から紐解く、大切な思いに気付ける!

この小説は、謎を解き明かすミステリーではあるが、

登場人物たち一人一人の心の中の謎を紐解いていく。という心温まる青春ストーリーになっています。

だから、ドキドキワクワクするようなミステリー小説を読もうと思っている人は、この小説は合わないかもしれません。

 

一話一話の内容は、学生生活のよくありそうな、謎や疑問に対し、推理をしていくシンプルな形式になっています。

でも、謎や推理を楽しむというよりは、登場人物たちのまっすぐな思いから生まれる「すれ違い」「隠し事」。友人に対して遠回しな行動を取ってしまうと、そこに相手が疑問誤解を持ってしまいます。

 

日常の謎というより、

心の中にある思いや考えによって、不自然な行動をとってしまっている部分が普段とは違って見えて、他者から見ると「謎」があるように思えてしまう。

 

その「謎」に対し、

学校に通わず、人とあまりコミュニケーションを取らない、非常識で気分屋な頭の切れる少年(鳥飼 歩)が、探偵役として推理していきます。

歩の変人さが分かるエピソードで、

一人で入った喫茶店で、初対面の人間も座っている四人掛けテーブルの空席に躊躇なく座るような変人であることを、わたしは知っている。

かなり非常識なメンタルをしていないと、こんな行動は取れませんよね。

彼の言い分としては、

「僕は、小さなテーブルでちぢこまって飲み食いするのが苦手なんだ。カウンターはもっと苦手。もちろん、それらに座らざるを得ない状況であれば、仕方なく座るけどね。それくらいの良識はあるさ」

でもこんな、頭の切れる変人だからこそ、常識人の心の中にしまっている思いを客観的に見ることができる。

 

推理をする際には、

当事者や周りの人に、友人の普段とは違う行動や疑問点を聞き、客観的に判断します。

「着信したメッセージを放置するとか、寝坊して朝練に行かないとか、そんなにおかしいことなのか?」

「京介君はとっても律儀で几帳面な人なの。こんなこと、知り合ってから初めてだよ」

普段とは違う行動を取っている。それが普段一緒にいる友人からしたら謎になる。

 

相手に対する思いや心遣いによって生まれる謎を、第三者の客観的な視点で論理的に推理する。

そうすることで、感情的に考えると分からないような人物たちの心の中が見えてくる。

友人との思い、気持ちを再確認、再発見する

というミステリー風の青春感動小説です。

 

この物語を読んで、

友人が、いつもとは違う行動や、らしくない行動をしたときに、なぜこんな行動を取ったのかを考えてみることが大事。

その上で、事実を相手から無理に聞き出してはいけない。言いたくないから言わないわけであって、無理に聞き出そうとすると逆に迷惑になってしまう。

聞こうとするのではなく、「いつでも手を貸して上げられる」ということを伝えたほうが、相手も気楽になるかも。

その人のことはその人しか分からないことだから、自分はいつでも手を貸せる状態にして、相手が言ってくれるのを待ってあげるのがやさしさなんじゃないかと、考えさせてくれました。

 

最後に歩の名言、「心の中にある謎」だからこそ気を付けないといけないこと

「真実を知ることは、必ずしも問題の解決策には繋がらないこと。それどころか、新たな問題を生み出してしまう可能性すら孕んでいる。世の中には、曖昧なままにしておいたり、知らないままでいた方がよかったりすることもある」

殺人事件では犯人を見つけないといけませんが、

日常の謎では、人の心の中に直接土足で踏み込んでしまう恐れもある。友人の悩みを解決してあげたいと思うからこそ、真実を知らないでいてあげたほうが良いこともあるんですね。

03:『探偵は教室にいない』心温まる青春ストーリー!

ただのミステリー作品ではなく、

日常の謎ならではの、心の中の思いに焦点を当てたストーリーです。

鳥飼歩の変人さが面白く、

物語の最後には、友人に対する思いを再確認でき、感動できる内容です。

 

川澄浩平 著

『探偵は教室にいない』

是非読んでみて下さい!

最後まで読んでいただき、

ありがとうございました!!

 

他の作品の【感想】はこちら↓

【感想】「ビブリア古書堂の事件手帖」三上延著|古本屋のあの雰囲気が好きな方必読です!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA