こんにちは、ミャザです!
今回紹介するのは、
鯨井あめ著
『アイアムマイヒーロー!』
この小説は、
自分を勘違いし、思い込んで、誤魔化し続けて、緩やかに挫折していった主人公・敷石和也(しきいしたかなり)が過去にタイムスリップするお話。
普通のタイムスリップと違うのは、タイムスリップ先が過去の自分ではなく、過去の自分の友達の姿になり、「過去の自分を第3者目線で見る」というところです。
今に悩んでいる和也が、ヒーローを目指していた過去の自分を客観的に見て、元の世界への鍵を見つけていく物語となっています。
こんな悩みを持っている人におススメです。
- 新しい自分に生まれ変わりたい
- 劇的な何かを求めている人
- 今の自分は、「まだ本気を出していない」、「負けていない」、「こんなものじゃない」、「まだ大丈夫」と思い込んでいる人
- 悩んでいることに悩んでいる人
↑主人公は、まさにこのように悩んでいます。この物語は、劇的な何かきっかけを与えてくれるものではなく、「自分を見つめなおしてみよう」と思わせてくれるような物語です。
目次
01:『アイアムマイヒーロー!』作品情報とあらすじ
『アイアムマイヒーロー!』作品情報
著者 :鯨井あめ(くじらいあめ)
出版社 :講談社
発行年月:2023年6月15日
ページ数:367ページ(特別対談アリ)
鯨井あめ(くじらいあめ)1998年生まれ。兵庫県豊岡市出身。
「晴れ、時々くらげを呼ぶ」でデビュー。
「アイアムマイヒーロー!」は二作目の長編小説。
あらすじ
自堕落な日々を過ごす大学生・敷石和也。同窓会を抜け出た彼は、駅のホームから落ちる女性を目撃。直後に意識が遠のき、気づくと過去にタイムスリップしていた。眼前には小学生時代の無鉄砲な自分がいて、自身は見知らぬ子供の姿になっている。この「奇跡」は何なのか。気鋭による情感豊かな現代SF長編。
02:『アイアムマイヒーロー!』人は、簡単には生まれ変われない
・主人公の「負の気持ち」に激しく共感する物語
冒頭文を読んだ瞬間に、この本は自分のための本だと思った。
変わりたい、と思い続けている。自分の影を振り切って、過去を捨て去って、新しい姿に生まれ変わって、そうすれば、万事が上手くゆくと思っている。
あ、これオレのことだ。と感じた。
「共感」というより、「心の中を見透かされた」ような感覚に陥る。
冒頭文で、自分が悩んでいることと同じ悩みを持つ主人公が出てきたら、「どんな風にその悩みを乗り越えていくのだろう」と気になって本を買ってしまいます。
「この本はどう自分を励ましてくれるだろう」と期待して読むことも多い。
他にも共感できるポイントがあり、
和也は同窓会に行き、就活の話になった際に、
こんな話さっさと終わらせたい、と思うが、話題を変えるあてがない。失敗談を笑い話にする余裕はないし、自分のことを話せば、何かが瓦解してしまう。
「何かが瓦解してしまう。」って意味としては嫌だけど、響きとしてはなんかよくないですか?なんかオシャレな感じ
何も無い自分の話をしてしまうと、無いものが無くなるというか、崩れている自分が崩れてしまう。こんな感覚を上手く表現している言葉。
でも、実際は話したいとも思ってる。
話したいけど何かが瓦解してしまうかもしれないし、話したら引かれるかもしれない。
絶対に言いたくないけど、言ったらラクになれるかもしれないという誘惑が襲ってくる。
これってあるあるじゃないですか?
・よくあるタイムリープものとは少し違う
よくあるタイムリープだと、過去や未来に行き本人視点で体を動かすか、本人自身が遠目から過去や未来の自分を眺める、というパターンだと思います。
この作品では、和也が過去にタイムリープすると、「過去の和也」はそのまま存在し、「現在の和也」は「過去の和也」の実在しなかったはずの友達の姿になっており、名前を「かずや」として生活します。
「かずや(現在の和也)」は、過去の自分を否定的に見ており、過去の自分が調子に乗った言葉を言うと、現在の大人としての対応で否定していきます。
子供の発言だから、何も考えておらず無鉄砲さはありますが、真っすぐでポジティブで、本当はこうできたらいいと思える発言をしている。だからこそ過去の自分を否定的に見ているのかもしれません。
「人は、自分のことについて全然わかっていない」といいますが、
客観的に自分を見ることができると、自分がどんな奴で、どんな癖があって、どんな印象なのか何となく分かる。
「人は、子供の頃の感じ方は大人になっても変わっていない」といいますが、
過去の自分を見つめなおしてみると、自分がどう思って、どんな発言をして、どう行動しているかというものは、現在とさほど変わっていない。
こう考えると、今自分が本当に持っているものが分かる。何もないと思っていても、気づいていないだけであって本当は持っている。ただそれが、恥ずかしい、面倒くさい、人に言えるほどではないという理由から隠してしまい、自分からも見えなくなってしまっているだけ。なのではないか。
今に悩み何かきっかけを待っている
今悩んでいるのは何かあったからではなく、何も無かったから
ずっと待っていてもゼロからは何も起こりはしない
過去も今も未来も繋がっている
過去の自分の選択を受け入れられるようになれば、今自分が本当は持っているものに気付ける、見えるようになる。それが第一歩。
逆に受け入れられないと、ひたすらあがき続けるしかなくなる。器用な人ならゼロから作り上げていくこともできるかもしれないが、自分は器用ではないから過去に目を向けてみる。
・僕の感じたことを書き連ねました
僕は、学生の頃から周りに合わせて、周りに流されて生きてきた。自分には何も得意なことが無い、やりたいことが無い、と思っていた。
ずっと悩んで、待っていても何かできることが増えるわけではなく、逆にどんどん自分に自信がなくなっていく。
好きなものがあっても、好きでいるだけというかもっと細かい部分まで深堀していない。嫌いなことにはもちろん頑張れないが、好きなことなら少し辛くても頑張って深堀してみたり、もっと勉強してみたり、他の好きと組み合わせてみたり、とできるはずである。これができなきゃ何もできない。これができればもう少し世界は自分は変わって見えるかもしれない。
過去を振り返ってみると、好きなことはたくさんあったし、まあまあ得意なこともあった。
過去を否定してしまうと、一から自分というものを作り上げていくしかない。過去を受け入れることができれば、皆が探している「本当の自分」というものが見つかるのではないか。
過去を見つめなおすとは、後悔や、優越感に浸る、懐かしむことだけでなく、自分ができたことを洗い出すために過去を思い出してみると、昔挑戦できなかったことを再挑戦してみてもいいかもしれない。そこが自分の可能性という部分なのかもしれない。
03:『アイアムマイヒーロー!』自分が自分のヒーローになりたい!
『アイアムマイヒーロー!』を読んで、自分が何を本当は持っているのかを考えるきっかけとなりました。昔から好きなこと、得意なこと、考え方は今でも自分を支えてくれるものになりえるし、
昔から嫌いなこと、苦手なこと、やりたくないこともじゃあ何をやらないで何をやるかを決める手がかりともなりえます。
それだけ分かっていれば、一歩前に進むことができる。
そう考えさせられる作品でした。
鯨井あめ著
『アイアムマイヒーロー!』
是非読んでみて下さい!
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました!